
【最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門のレビュー】
うむ、バナナは食物繊維が豊富で便秘解消に良いのか。
トマトはリコピンが豊富らしいから、積極的に食べて抗酸化作用を高めよう。
巷には様々な健康に良いとされる食べ物の情報が溢れています。
でもここである疑問が浮かびます。
何をどの程度摂取したらいいかは、人によるのではないか?(1人1人、健康状態って違うから)
その人に必要な栄養のバランスを整える方法があればいいのに。
そこで出逢ったのが、栄養療法(オーソモレキュラー療法)です。
栄養療法(オーソモレキュラー)とは?

オーソモレキュラー医学とは、ビタミンやミネラル等の栄養素を正しく取り入れることで、病気の予防や治療を行う医療
オーソモレキュラーは英語で「Orthomolecular」と書きますが、「Ortho」とは「整える」、「molecule」とは「分子」という意味です。
分子を整えるとはどういうことでしょうか。
我々の身体にある60兆個の細胞の機能は、細胞を構成する分子の濃度によって決まるといいます。
つまり分子の濃度が適切でなければ、身体に何らかの問題が現れるということです。
そこで血液検査を行い、分子レベルでどの栄養素が不足しているか、より細かく身体の状態を分析していくのです。
医療機関が行う血液検査項目は20ほどですが、栄養療法では60項目以上あります。
(新宿溝口クリニックのホームページより)
不足している栄養素がわかれば、その人に必要な分量の良質なサプリメントを身体に取り入れます。
そして定期的な検査から得られるデータを元に、徐々に細胞を構成する分子を整え、自然治癒力を高めるというものです。
【最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門】には何が書かれているか

目次
第1章 オーソモレキュラーとは何か?
第2章 オーソモレキュラーの考え方
第3章 オーソモレキュラーの実際―症例から学ぶ
第4章 オーソモレキュラーにおける食事
第5章 積極的な栄養素の補給のために―サプリメント
第6章 オーソモレキュラーにおける検査
第7章 オーソモレキュラーの可能性―不妊症、抗加齢医学、がんへの応用
あとがき
1章ではオーソモレキュラーの概要、そして著者である溝口先生とオーソモレキュラーの出会い、オーソモレキュラーの歴史が書かれています。
何か新しい理論が出ると権威を持つ者がその普及を阻むというものは、よく聞く歴史のお話ですね。
栄養学も迫害された歴史があったようです。
2章では、至適量などオーソモレキュラーの基本的な考え方が書かれています。
中でも「サプリメントの質はなぜ大切か」から、インターネットやドラックストアで簡単に手に入るような安価なサプリメントについてよく考えないといけないと感じました。
どう考えても医療機関が処方したサプリメントと同じ質だとは思えないですから。
3章では、オーソモレキュラー療法の症例が5つ紹介されています。
特に興味深い症例は溝口先生が栄養療法によってアトピー性皮膚炎や花粉症を改善されたケースです。
そして栄養療法を継続することの大切さも述べられています。
よく患者さんから「いつまでこの食事とサプリメントを摂らなければならないですか」と聞かれることが多く、
先生は「患者さんのゴール設定によって変わる」と答えるそうです。
鍼灸師である僕も、ゲストの方から「どれくらい治療が必要か」と必ず聞かれます。
その回答は人それぞれ違い、その人のゴールによって違います。
そしてどの治療法も、慢性的な疾患、症状であればあるほど、時間がかかるのは事実です。
(副作用が少なく、徐々に改善に向かうような治療法であれば余計に)
(場合によっては)時間とコストがかかるので、患者さんは長期戦の治療を受ける覚悟を決める必要があります。
そこで生じる心理的負担を少しでも軽減するために、治療家は技術向上だけでなく常に患者さんの気持ちに配慮しなければならないと感じました。
どの症例も当時の患者さんとの診療の様子が伺えて、とても興味深いものでした。
4章では、主にカロリー、タンパク質、糖質、脂質について書かれています。
大切なのは「オーソフードバランス」という考え方で、「ある時期のその人にとって、最も適した食事」のことです。
何を食べるかが大切なのは誰でも知っていることですが、これをオーソモレキュラー的に考えるというものです。
5章では、サプリメントをどのような視点で選べばよいか、詳しく書かれています。
2章で僕はネットで簡単に買うサプリメントの質について言及しましたが、(全員が医療機関のサプリメントを使うことは現実的に難しいので)自分がサプリメントを選ぶ際の良い基準が紹介されています。
具体的には以下の以下のものがあります。
・プロテイン
・アミノ酸
・ビタミンB
・鉄
・亜鉛
・ビタミンC
・ビタミンD3
6章ではオーソモレキュラーにおける以下の検査が紹介されています。
(1)血液検査
(2)ミネラル検査
(3)尿中有機酸検査
(4)遅延型(IgG型)食物アレルギー検査
(5)腸の検査
(6)副腎の検査
最後の7章ではオーソモレキュラー療法の、不妊症、皮膚のたるみ・しわ等のアンチエイジング、がんの治療への応用の可能性について書かれています。
自分に何が足りていないのか分子レベルで分析することで自然治癒力を上げていく栄養療法(オーソモレキュラー)は、まだまだ多くの疾患へ応用できるのではないかと感じました。
【最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門】はこんな人におすすめ

タイトルには入門とあるように、本書はとてもわかりやすくオーソモレキュラー療法について説明されています。
多少専門的な用語も使われていますが、初めてオーソモレキュラー療法を学ぶには最適な本だと感じます。
そして本書を読めば、おそらく実際に試したくなりますよ、オーソモレキュラー(僕のように)!
まとめ
精密な血液検査により栄養状態を細かく分析しその人に合ったサプリメントを処方する「オーダーメイド」な栄養療法は、東洋医学に通じる部分があり、とても興味深く、もっと勉強したいと思いました。
いまの時代、マスコミュニケーションで得られる情報を鵜呑みにせず、自分のための健康法を個人で考えなければならないと本書を読んで改めて感じます。
最後に本書にもある古代ギリシャの哲学者エピクテトスの言葉で終わります。
It is impossible to begin to learn that which one thinks one already knows.
人は、すでに知っていると思っていることについて、新たに学ぶことは不可能である
まずは本書を手にとって、(実は全然知らないかもしれない)「栄養」についてもう一度考えましょう。
では、よい1日を!